「スパイダー」という言葉は自動車の出現よりも古く、馬車の一つのタイプである「スパイダー・フェートン」に由来します。風雨からの保護を最小限に抑え、ツーリングよりもスポーツやショー・アクティビティを目的として軽量化した馬車です。この馬車を見た人々は、華奢な車輪が「クモ(スパイダー)の脚のようだ」と感じたものでした。
166 Inter は、リトラクタブル・ルーフを備えた最初のフェラーリ・ロードカーでした
馬車が消えても、このコンセプトは生き残り、いやむしろ発達し、いっそう革新的で官能的な車となっていきました。フェラーリの最初の車であるFerrari 125 Sは、レース用の「バルケッタ」(「小さなボート」の意味)でした。その名称と形式は、1949年にルイジ・キネッティがFerrari 166 MMで優勝したフェラーリ初のル・マン24時間レースで再現されました。
1940年代の終わり頃、フェラーリ初のロード・ゴーイングGTカーであるFerrari 166 Interがスパイダー・バージョンとなりましたが、これを設計したのがスタビリメンティ・ファリーナでした。1951年にモデナとトリノの中間で行われた有名な会合を経て、エンツォ・フェラーリは、このトリノに拠点を置く「カロッツェリア」に自分の車を「スタイリング」する独占権を与えました。
こうして初めて誕生したFerrari 212 Interカブリオレは、以後、自動車史上最も実りのある創造的なコラボレーションの始まりを告げたのでした。
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その後も、しばしば陽光を愛する裕福な顧客の要望を受け、多くのコラボレーションが生み出されることになります。 Ferrari 400および410Superamericaのように、フェラーリの基準からすると多少控えめな車もあり、またFerrari 250 PFカブリオレのように上品な車もありました。
フェラーリのなかで最も有名なスパイダーは、おそらくFerrari 250 GTCaliforniaでしょう。このモデルは、エンツォ・フェラーリの友人であるアメリカ人ルイジ・キネッティと、アメリカ西海岸のフェラーリ輸入業者であるジョン・フォン・ノイマンから、もっと明確にスポーティなものを作ってほしいと要望され、生まれたのでした。2つのバージョンが正式に登場しました。「Tour de France」をベースにしたホイールベースの長い車と、Ferrari 250 GT「passo corto」をベースにした短い1960年の車です。
1977年の Ferrari 308 GTSでは、リトラクタブル・ルーフよりむしろ1972年の Ferrari Dino 246 GTSで初登場したのと同様の取り外し可能なルーフが導入されました。
1960年代の終わりには、栄光に輝くFerrari 365GTS/4「Daytona」Spyder(「i」ではなく「y」の「Spyder」)が登場しました。ボディはピニンファリーナのレオナルド・フィオラヴァンティの作品でした。その画期的なシェイプを変えるには、フェラーリとスカリエッティの製作者たちによる多大な努力が必要でした。ルーフを取り外すことで失われた構造的な剛性を強化するためには、多数の新しいボディ・パネル、新しいフロント・ガラス・フレーム、トランク・リッド、シャーシの補強が必要でした。
他方、フェラーリの革新感覚が強められた結果、1972年のFerrari Dino246 GTSには取り外し可能なルーフ・パネルが導入されました。これは、ミッド・エンジンの配置の制約の範囲内で、新鮮な空気を導入するための賢い方法でした。エンジン・フレームの側面と前面でシャシーが強化され、ロール・フープにも補強が追加されました。
812 GTSは時速45kmまでの速さでルーフを展開できます
1977年のFerrari 308 GTSでも似たようなアプローチが採用され、また1983年の「Mondial Cabriolet 」では、義務的な構造上のアップグレードを組み込みながら、フォールディング・ルーフと4つのシートが巧みに両立されました。1993年に登場したFerrari 348 Spiderは、1969年のFerrari 365 GTS以来となるフェラーリ初の2シーター・コンバーチブル
でした。その後継モデルのFerrari F355は、ベルリネッタ、ターガ・ルーフのGTSおよびスパイダーが用意されることになり、GTBを象徴するリヤ・バットレスが廃止され、フォールディング・キャンバス・ルーフが巧みに組み込まれました。
その後継モデルであるFerrari 360 Modena Spiderは、ピニンファリーナによる新しいモダニズムの美学によるデザインを採用しながら、いっそう賢い初のオール・アルミ製のフェラーリGTカーとなりました。シート・メタルとパネルが複雑に機械的に連動し、バレエのような動きを見せながら、20秒でルーフが折りたたまれるのでした。シート背後の2つのロール・フープが安全性重視を際立たせ、これを補助するフェアリングと相まって、車のリヤのシェイプを形づくりました。その後、ミニマリストのFerrari 550 Barchetta、さらにFerrari 575 Superamericaが登場しました。このモデルに使用されたルーフは、ピニンファリーナの元デザイン・チーフだったレオナルド・フィオラヴァンティが特許を取得し
、イタリアのガラスを専門とするサン・ゴバン社と共同開発された、驚くべき「レボ・クロミック」ルーフでした。このルーフは一軸で180度回転し、トランクと同じ高さになります。フェラーリはさらに一歩進め、1平方メートルのガラス・パネルの色合いを5段階で選択し、センター・コンソールのダイヤルで操作できるようにしました。
ゼロ・ターボラグと14秒で開閉できるリトラクタブル・ハードトップが Ferrari F8 Spider の特徴です
2008年には、いちだんと賢い機能が登場しました。Ferrari Californiaのルーフが、3つではなく2つの部分で構成され、互いに折り重なって、トランク・パネルの下に格納されるようになったのです。エンジニアリングの真の傑作であり、これはFerrari Portofinoではさらに最適化されました。ルーフが魔法のように格納されるのを実際に目にするまでは、固定
式ルーフのクーペだと思ってしまうことでしょう。
もちろん、スパイダーはFerrari F8 Tributoの形で現在まで引き継がれ、新たにFerrari 296 GTSも導入されました。また、2010年のFerrari 599SA Aperta(80台)、2014年の魅惑的なFerrari F60 America(10台)、同年のFerrari Sergio(わずか6台)などの限定シリーズ・モデルや、いくつかの優れたワンオフも記憶されるべきでしょう。Ferrari F50に続いて、究極的に切り詰めた造形によって感覚を惑乱するLaFerrari Apertaが登場し、また史上最もパワフルな「オープン」フェラーリとしてFerrari SF90のスパイダー・バージョンが登場しました。さらに、ルーフという考えをすっかり取り除いたFerrari Monza SP1/SP2も忘れることができません……