365GTC/4は365GT2+2の後継となるモデルでした。設計に工夫を凝らすことで、コンパクトなクーペボディでありながら、後席を設置することに成功しています。
エンジンには、365GTB/4と比べてトルキーな性格を強調するチューニングが施されています。最高回転数を下げることで低回転域でも扱いやすくなり、リラックスしてドライブできるクルマに仕上がっています。ただし、ひとたびエンジンに鞭をあてれば嬉々として7000rpmまで回るフェラーリの血統は受け継がれています。このモデルは、生産台数のほとんどがアメリカ市場で販売されました。
365GTC/4は1971年のジュネーヴ・ショーでベールを脱ぎました。1970年に生産が終わっていた365GTCの後継車であり、このモデルが発表されたのと同時にカタログから落ちた365GT2+2の後継車でもあります。
365GTB/4と兄弟関係にありながら、保守的で攻撃性を抑えたボディをまとった365GTC/4は365GTCの後継車として立派に役割を果たします。一方、365GT2+2の後継車としての役割は十分に果たすことができませんでした。後席は+2としてもぎりぎりの広さしかなく、小さな子供以外座ることはできなかったからです。しかしバックレストを倒すと使いやすいラゲッジフロアに変身しました。フェラーリにしては異例なことに、シート中央部とドアの内張に格子縞のファブリックを使っていました。これは、365GTC/4だけのインテリアでしたが、ただしオールレザー張りもオプションで注文することができました。
このモデルには最初からヨーロッパ仕様と北米仕様が用意され、後者はエミッションコントロールデバイスが備わり、これが性能を低下させています。北米仕様は前後フェンダーに角形のサイドマーカーライトが備わることで識別可能です。
このモデルは、1969年にフィアットがフェラーリの生産車部門の経営を引き継いで以来初めて発表された12気筒フェラーリでした。まったく新しいボディをまとっていましたが、生産期間は1972年秋までと比較的短く、その間500台が作られています。しかし、機構部分は事実上そのまま後継車の365GT/4 2+2に引き継がれました。365GT/4 2+2ではシャシーの全長が伸びたことが唯一の違いです。
ボディスタイルは先代モデルの365GTCとはまったくの別物となっています。優雅な曲面と楕円形ラジエターグリルは姿を消し、当時流行しつつあった、とがったウェッジデザインに取って代わられたのです。低く位置するノーズは全幅にわたる黒のラバー製バンパーが特徴で、これが奥行きの浅い角形ラジエターグリルを取り囲みます。角形のドライビングライトと車幅灯/方向指示器のユニットがグリル開口部の両端に収まり、
片側2灯の4灯ヘッドライトはリトラクタブルで平らなノーズパネルのバンパーとボンネット前端に挟まれた部分に位置します。そのボンネットはほぼノーズパネル幅いっぱいに開き、365GTB/4 と同様なエンジン熱気抜きアウトレットを備えています。プレーンなフロントボディサイドは流れるようにキャビンに至り、その5ウィンドウキャビンのサイドウィンドウプロファイルは端部が鋭い涙滴形という表現が一番相応しいと思われます。キャビンを通過したラインは一定の浅い角度を保ちつつトランクリッドを抜け、すっぱりと切り落とされたボディ後端に到達します。一段奥まったテールパネルに3連丸形テールライトがマウントされ、その下がマットブラックのバンパー。これはフロントの黒のラバー製バンパーとデザイン上の対をなしています。
ボディのデザインと製作、および内装の取り付けはピニンファリーナが行い、しかる後にフェラーリに送られてメカニカルコンポーネントが組み込まれました。ボディはスチール製で、ボンネットとトランクリッドがアルミ製となっています。
ボディはホイールベース2500mmのシャシー上に架装。365GTC/4は最初にFの文字が付く新しい社内コードネームを用いた最初のフェラーリで、この場合はティーポF 101 AC 100と呼ばれました。すべてロードカー用の奇数のシャシーナンバーが打刻されています。同時代のフェラーリの基本線に沿って作られ、2本のメインとなる大径楕円断面の鋼管が縦方向に走り、この2本を頑丈なクロスメンバーが繋ぐとともに、サブフレームがボディと補機類を支持しました。
ハンドル位置は左右どちらでも選ぶことが可能で、パワーアシストステアリング、電動ウィンドウ、エアコンは標準装備されました。標準のホイールはシルバーに仕上げられた星形5本スポークの軽合金製で、ラッジのセンターハブにノックオフ式スピンナーで固定されています。ただし、法規の関係からアメリカ仕様と、一部の輸出仕様ではクローム仕上げの大型のセンターナットで固定されました。ボラーニ製ワイアホイールが生産期間を通じてオプションで用意されています。
エンジンは365GTB/4に搭載されたのと同じV12ユニットで、各バンクあたりカムシャフトが2本走ります。81mm x 71mmのボア・ストロークから4390ccの排気量を得ており、潤滑方式はウェットサンプ。
ボンネット高を抑える目的から、ダウンドラフトではなくサイドドラフトキャブレターを備えたので、シリンダーヘッドの形状も異なります。
365GTB/4では吸入ポートがVバンク内側にあったのに対し、新型ヘッドではカムシャフトの間に位置したのです。このおかげでオイルフィルターとエミッションデバイスをVの間に置くことができました。
シャシー同様、エンジンの型式表示もこのモデルから新しくなり、このモデルの社内コードネームはティーポF101AC000となっています。ツインチョークのウェバー38 DCOE 59/60キャブレターを各バンクに3基、計6機備えました。北米仕様はシャシーナンバーの最後にAの文字が付いています。
点火はヨーロッパ仕様では1基のコイルにより、ディストリビューターはエンジンの後方にマウントされます。北米仕様ではディストリビューターが2つで、電子制御の点火システムが備わりました。公表出力はともに320bhpですが、北米仕様では排ガスに含まれる有害物質を抑えるためにファストアイドル機構や、排気マニフォールドに仕込まれたエアインジェクションなど、数々のデバイスが追加されています。
駆動力はフライホイールにマウントされるクラッチを通して、一体化された5速のオールシンクロメッシュギアボックスに伝えられます。リアサスペンションに備わるセルフレベリング装置を含め、動力伝達の方法は365GT2+2と同じで、レイアウトも同様となります。