1985年、モンディアル カブリオレは3.2リッターエンジンを搭載して3.2 カブリオレになりました。パワーが強化されることで、このモデルの独自性が一層際だつことになりました。なぜなら、同じような排気量のエンジンを積んだ4人乗りカブリオレで、3.2 カブリオレの動力性能にかなうライバルなどいなかったからです。328 GTB/S同様に、ピニンファリーナは細部を数カ所手直しして、スタイルと空力特性を改良しました。
モンディアル3.2はモンディアル クワトロヴァルヴォーレの後継車で、1985年のフランクフルト・ショーで2シーターの328と同時に発表になりました。クーペとカブリオレの両方があり、モデル名の3.2はエンジン排気量を示します。このモデルで初めてボディスタイルの手直しを受け、フロントとテールエンドのデザインが変わり、ボディカラーに塗られた、スムーズな曲線を描くバンパーが前後に備わりました。コンビネーションライトを内蔵したラジエターグリルは328にそっくりです。
ヨーロッパ仕様のモンディアル3.2カブリオレは社内コードネームティーポF 108 CS 100のチューブラースペースフレームシャシーに構築されました。ここにリアサブフレームがボルト留めされました。エンジン、トランスミッション、リアサスペンションがアッセンブリーで取り外せたので、メンテナンスが楽にできました。
これら変更の結果、フェラーリのカタログに載る8気筒モデルは、一目でわかる共通性を備えるようになりました。これ以外に先代モデルからボディ形状の変更はありません。インテリアの細部は今一度変更になりました。もっとも目立つのはメーターナセルの角が斜めに切られたことです。ダッシュボードはオプションで革張りにできました。
カブリオレのソフトトップは先代モデルからデザインを引き継ぎ、クーペのリアクォーターパネルを再現していました。クーペもカブリオレもテールにシンプルな“Mondial 3.2”というエンブレムがつきました。
5本スポークのホイールは、フラットスポークのデザインから、凸型スポークに変更になりました。ブレーキにABSがオプションで備わるようになったため、ネガティブオフセットジオメトリーをクリアする必要があったためです。ABSはその後、標準装備になりました。この結果、前後トレッドはそれぞれ25mm と 50mm拡幅されました。
モンディアル3.2カブリオレのV8エンジンの基本設計はクーペ版と同じですが、ボッシュのKジェトロニック燃料噴射と、マレリのMED 806Aマイクロプレックス電子制御点火システムを備えていた。公表出力はヨーロッパ仕様が270bhp/7000rpm、アメリカ仕様が260bhpでした。
バンクの挟み角は90度で、コッグドベルト駆動のDOHCです。83mm x 73mmのボア・ストロークから3185ccの排気量を得ました。社内コードネームはヨーロッパ仕様がティーポF 105 CS 000です。
エンジンはオールシンクロ5速ギアボックスと一体に横置きされました。トランスミッションはエンジンのウエットサンプの下、後方に位置しました。
クーペと同じくハンドルは右か左どちらでも選ぶことができました。また、世界各国向けの仕様が用意されました。フェラーリの生産モデルはシャシーナンバー75000以降、偶数と奇数が併用されました。モンディアル3.2カブリオレの生産期間はこの数字をまたがっていたましたので、この数字以前は奇数のシャシーナンバーが、この数字以降は偶数あるいは奇数のシャシーナンバーが打刻されました。
1985年から1989年までの生産期間に、シャシーナンバー59393から78895にいたる810台が造られました。