1966年のパリ・サロンでデビューした275 GTB/4は、4カム V12を搭載した初めての生産型フェラーリでした。このV12はP2プロトタイプ用の直系となります。
275GTB/4は外から見る限り“ロングノーズ”2カムモデルと事実上変わるところはありません。しかしボンネットを開けずに2つのモデルを見分ける簡単な方法があるのです。275GTB/4のボンネットには中央に細くて浅いバルジが前から後ろに走っているのです。初期型2カムモデルのボンネットも中央部が平らに盛り上がっているので、これと混同しないよう気をつける必要があります。2カムモデルと同じく、ピニンファリーナデザインのボディはスカリエッティが製作し、通常、ボディ本体はスチール製で、ドア、ボンネット、トランクリッドがアルミ製ですが、総アルミボディの個体も少数あります。
ボディは、ティーポ596というホイールベース2400mmのシャシーに架装され、すべてロードカー用の奇数のシャシーナンバーが打刻されました。シャシーは2カムモデルと事実上同一ですが、駆動系のレイアウトに細かな差違があるため別の社内コードネームが与えられました。左右どちらのハンドルでも選べる点も2カムモデルと同じ。標準ホイールは軽合金製の10穴デザインでしたが、生産期間を通じてボラーニ製ワイアホイールもオプションで用意されました。軽合金製ホイールも3枚耳のスピンナーで固定します。
ヨーロッパ市場向けのテールライトは丸形で、上半分がオレンジの方向指示器として働き、中央に丸形のリフレクターが備わります。北米仕様はレンズ全体が赤で、中央のリフレクターが丸形でした。
エンジンの主要寸法と基本レイアウトは275GTBの2カムユニットと同様ですが、各バンクに2本のカムシャフトを持つ新型ヘッドが装着されていました。社内コードネームはティーポ226で、77mm x 58.8mmのボア・ストロークから3286ccの排気量を得ることは275GTB用ユニットと変わりません。しかしプラグの位置は、Vバンクの外側からカムシャフトの間へと変更されています。
また、潤滑がドライサンプになったことも大きな変更点です。キャブレターは、6基のウェバー(40 DCN9、 40 DCN 17、 40 DCN 18のいずれか)を備えます。点火は2基のコイルにより、ディストリビューターはエンジン後方にマウントされます。公表出力は300bhp。2カムモデル後期型と同じように、駆動力はトルクチューブ内の、エンジンスピードと等速で回転するプロペラシャフトを介して5速のトランスアクスルに伝達されました。トランスアクスル自体はシャシーから独立してマウントされており、ここから左右のハーフシャフトを介して後輪に駆動力を伝達します。リアサスペンションは275GTB 2カムモデル同様、ダブルウィシュボーン、コイルスプリング、油圧ダンパーで構成されます。
このモデルのコンペティションバージョンはありません。ただしオーナーの大半はこのクルマを軽くチューンして様々なイベントを走っていたことも事実です。それも完璧な勝利が目的ではなく、もっぱら個人的楽しみのためだったと思われます。