フェラーリ版「宇宙の旅」
文:ジェイソン・バーロウ
注目すべきミュージシャン・ジェイソン・ケイのワンオフカー330 GT Shooting Brake
「飲みにでも行かないかい。330GTに乗って。」ジェイ・ケイを知って20年来、彼の車を幾度に渡って運転してきました。(度々急いで、いつも巧みに)しかし問題の車は、この男の基準から見てもスペシャルな一台と言えることです。ワンオフモデル Ferrari Shooting Brake、魅力的に型作られた一台です。フェラーリの会社の歴史の中でとても複雑であまり知られていない逸脱した一台とも言えるでしょう。
ジェイがそのクルマを所有して間もないにもかかわらず、私にテストドライブを許可してきたのです。彼は危険を犯そうとしているのだろうか、と思うと彼は笑いながら言いました。「君は僕が混乱していると思っているだろう?このクルマは誰もが合うタイプのクルマじゃないからね。」
確かに普通ではない一台です。シューティングブレーク、ステーションワゴン、エステート・カー:驚くほどの数のワンオフモデルのクルマがフェラーリのバックカタログに並び、1962年のスクデリア・セレニッシマのオーナー、ヴォルピ伯爵に依頼されて作った250 GT ブレッドバンまで遡ります。ブレッドバンはビジュアルよりも空気力効率化に重視した一台です。
この330GT Vignaleは、今までのデザインコードを完全に崩しました。スタンスとプロポーションの面では欠けていましたが、それを補う形で1960年代後半のイタリアの派手さと立体感を出しました。
330GTは1964年ブリュッセルのモーターショーに初めて登場しました。V12エンジン搭載 Ferrari GTのより上品でフォーマルな新しい時代の先駆けとなったのです。シャシはNo.7963、大西洋を渡り、コネチカットHQルイージ・キネッティの手に渡ります。
今では、アメリカにフェラーリの男ありとして知られる、キネッティの息子ルイージ・ジュニア(ココと言ったほうが知られているでしょう)。まさしく彼とボブ・ピークという一人の芸術家が協力し、シューティングブレークのアイデアを立案し、実現したのです。
完成したそのクルマは1968年トリノモーターショーに正式に登場しました。ツートーンのボディと見物客を驚かせる大胆なガラス、まさに新たに公開されたばかりの映画「2001年宇宙の旅」を思わせるようでした。