ラファエロの道
Enrico Dal Buono
この夏、1台のFerrari F8 Spiderが歴史上の最も偉大な画家の一人をしのぶべく、イタリア中部を走って彼の芸術の足跡をたどりました
今年2020年は、歴史上最も偉大な画家の一人であるラファエロ(ラファエロ・サンティ)の没後500年にあたります。現在でも、イタリア中部で車を走らせると、まるでイタリアのルネッサンス絵画に囲まれているような錯覚を抱かされます。
なだらかな丘の斜面。ゆるやかにダンスをしているかのような「ひまわり」の畑。緑の尾根に広がり、黄色いパッチワークのように風になびく小麦。ラファエロの絵画「イヴの創造」は、創造主がイヴをつくるために慎重にアダムから肋骨を抜き取っている場面を描いた作品ですが、辺りはこの絵の背景に描かれたエデンの園によく似た光景です。
このラファエロの初期の作品は、もう一つの作品「三位一体と聖セバスティアヌスおよび聖ロクス」とともに、1500~1502年にウンブリア州の街チッタ・ディ・カステッロにあるサンティッシマ・トリニータ教会のために描かれ、現在でもこの街の美術館に保存されています。
ラファエロは1483年、イタリアのマルケ州ウルビーノに生まれました。チッタ・ディ・カステッロで巨匠となり、フィレンツェでレオナルド・ダ・ヴィンチの作品に魅了されましたが、不幸にも37歳という若さでローマで亡くなりました。ラファエロが取り上げたミケランジェロ風のテーマは、マニエリスム様式に影響を与えたとされています。
今日、Ferrari F8 Spiderに乗って、ラファエロの活躍の舞台となったマルケ州やウンブリア州を旅することは、このルネッサンスの巨匠にまつわる絵画の世界に足を踏み入れるようなものです。
険しい地形を作り上げているイタリア中部の上り坂や下り坂を走破する場合は、「ウェット」モードや「スポーツ」モードと並んで、追加オプションの「バンピー・ロード」モードが役に立ちます。
ユネスコ世界遺産にも登録されているウルビーノは、天文学、芸術、都市計画を融合させた数学のルネッサンスの中心地でした。
ウルビーノ公国の宮殿に収蔵されているラファエロの「沈黙する女性」(「若い女性の肖像」)は、指輪をはめた憂鬱そうな表情の高貴な女性を描いた作品で、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」を思わせます。ここには、彼がわずか15歳のときに描いた、聖母子のフレスコ画も収蔵されています。
チッタ・ディ・カステッロの街でも、同じような世俗と宗教の組み合わせが見られますが、この街の宮殿にはピナコテカ・コムナーレ美術館が併設されており、来年2月にはここで「チッタ・ディ・カステッロにおける若き日のラファエロ - およびそのビジョン」と題する展示会が開催されます。
ウルビーノからチッタ・ディ・カステッロまでは、車で片道たっぷり1時間掛かります。途中、古代ローマ時代のフラミニア街道に掘られたトンネル(紀元前220年)を通りますが、ラファエロはここの石灰岩も描いています。
この蛇のように曲がりくねった道では、コーナーを抜けるたびにアクセル・ペダルを踏み込みたくなる誘惑に駆られ、そのダイレクトなレスポンスは、まるで思考の力でドライビングしているかのような錯覚をもたらします。
ウンブリア州に入ると、森が濃くなり、ぼんやりと青みがかった雰囲気の中で、野性的な丘の稜線がそびえるようになります。ラファエロはこうした風景を描くために、レオナルド・ダ・ヴィンチが創始した「空気遠近法」という技法を発展させました。
走りすぎる風景は昔と変わりませんが、V8エンジンのシンフォニーは走りの現代性を引き立てます。エンジンは独特なサウンドを奏でるようにマップ制御され、パワフルにシート間に届くように調整されているので、まるでサウンドが物理的に存在するかのような感覚を抱かせ、ドライビングを高めてくれます。
テヴェレ川に沿ってウンブリア州の州都ペルージャに向かうと、この街でラファエロが活動を始めた1501年頃へとタイム・スリップします。この時期、ラファエロの絵はますます貴族たちに珍重されるようになりました。ラファエロは5つの祭壇画に加え、プラートのサン・フランチェスコ教会のために「十字架降下」を描き(この絵は1507年にフィレンツェに来たときに完成)、さらに「聖母子」を描きました。
現在ペルージャに残っている大きなフレスコ画は「三位一体と諸聖人」だけで、この絵は聖セウェルスをまつるカマルドリ修道院の礼拝堂のために描かれました。
話は尽きませんが、今年500年を祝う価値の十分にある、圧倒的な遺産です。それに、なんと素敵なドライブができることでしょう。