進化し続ける完成度

09 10月 2020

クリス・リース

新型Ferrari Portofino Mは、特別な要素が追加されているだけでなく、きわめて人気の高い2+ハードトップ・コンバーチブルの在り方を大きく変化させています。


フェラーリには一つの基本方針があります。それは、かつて類を見ないブランドでありながらも、決して現状に満足しないということです。
プロダクト・マーケティングを指揮するエマヌエレ・カランドは、「フェラーリのストーリーは、一連の進化に関するストーリーです」と主張したうえで、 「私たちは前へ進むことを止めません。エクセレンスを実現させるために、つねに努力を続けています」と続けています。

新型Portofinoのモデル名に加えられたアルファベットの1文字は、進化を追求しようとするこのスピリットによって、特定の結果がもたらされたことを示しています。その1文字とは、『Modified』を意味する『M』の文字です。

F512 M、456M GT、575M Maranelloといった過去のモデルの場合と同様、新型モデルのモデル名に加えられた『M』の文字は、パフォーマンス、デザイン、快適性が進化したことをアピールしています。

ルーフを開ければ楽しい夏のドライブに最適な1台となりますが、 ルーフを閉じれば冬場でも同じように走りを楽しむことが可能です。2+の広々としたキャビンを備えているため、乗員同士で走りの楽しみを共有することができます。

カランドは次のように説明します。「Portofino Mは(既存のPortofinoと)同じ車のように見えますが、各種の改良を積み重ねたことで、新しい車であると感じられる仕上がりになっています。特に違いが感じられるのはその走りです。よりスポーティーでありながら、運転のしやすさにも磨きが掛かっています」。

注目すべきポイントの一つにパワートレインがあります。最高出力は20 cvアップし、620 cvという驚くべきレベルに達しました。その理由としては、ソフトウェアをアップグレードしたこと以外にも、カム・プロファイルの改良およびターボチャージャーの高回転化(最大約5,000 rpmの増速)を許容するスピード・センサーの採用など、各種のコンポーネントを新しくしたことなどが挙げられます。この結果、パワーウエイト・レシオの値は2.49 kg/cvとなっています。また、バリアブル・ブースト・マネジメントによって、低速ギアでのよりシャープな加速と高速ギアにおけるトルクの増大が実現しています。

改良されたエキゾースト・システムは、サイレンサーが取り除かれたほか、バイパス・バルブ導入のためにジオメトリーが新しくなったことでエキゾーストの背圧が小さくなりました。こうしたすべての要素が相まって、真のV8サウンドが完成しています。このサウンドを楽しむための最良の方法は、何といってもオープン・トップ走行ではないでしょうか?SF90 Stradaleの新しいデュアル・クラッチ・トランスミッションにならって、新たなギアが1速追加されました。

新しいソフトウェアは、よりクイックなシフト・チェンジを実現させることから、発進・停止の多い市街地走行での快適性を高めることに効果を発揮し、新型のトランスミッションは、CO2排出量を抑えるとともに燃料消費量の改善に貢献します。

5つのモードを備えることになったManettinoには、『Race』と『Wet』のモードが追加されています。また、フェラーリ・ダイナミック・エンハンサーを備えるサイド・スリップ・コントロール6.0が2+のスパイダーに初めて採用されたことで、この車は快適性を優先する一方、より直感的な走りが可能になっています。第三世代の電子制御リヤ・ディファレンシャルは、トラクション性能を最大限に引き出すとともに、各輪に対するパワーの配分を最適化します。

総合的に見て、この車は運転のしやすさがいっそう進化したと言えます。

カーボン・セラミック・ブレーキが標準装備されます。ペダルにさらなるチューニングが施してあるため、ドライバーに対しての鋭いフィードバックが期待できます。

装備の面でも進化が見られます。オプションのADASシステムには、自動緊急ブレーキを備えるアダプティブ・クルーズ・コントロール、交通標識認識機能を備える車線逸脱警告システム、リヤ・クロス・トラフィック・アラート機能を備えるブラインド・スポット警報システム、さらにはサラウンド・ビュー・カメラが含まれています。

デザインも進化していますが、この点についてカランドは次のように話しています。「私たちの狙いは、車のルックスを変えることではなく、機能性とパフォーマンスを向上させながら車両を進化させることでした」。それ故、新しいエア・インテークを備えるフロント・バンパーの形状は、冷却性能を高めるといったエンジニアリング要件を満たすものとなっていますし、新たな形状に仕上げられたサイド・エア・アウトレットも一定の効果を発揮しています。フロント・エンドの新たなデザインが車両のエアロダイナミクス性能を改善させている一方、リヤ・ディフューザーはバンパーと独立した構造となり、カーボン・ファイバー製のものを選べるようになりました。

その他の装備もPortofino Mの地位を揺るぎないものにしています。例えば、流麗なツー・ボックス・デザインの2+ボディにリトラクタブル・ハードトップを採用しているのがPortofino Mだけであるといった事実も、この車を唯一無二の存在にしている要因です。キャビンはスポーツ性を維持しつつも多用途性が感じられるデザインになっています。これは、コックピットがシンメトリーなレイアウトになっていること、また、マルチ・レベルのダッシュボードにタッチスクリーン式の大型メイン・ディスプレイとオプションのパッセンジャー・ディスプレイが備わっていることによるものです。折り畳み式のリヤ・シートおよび18-wayの電動調節式フロント・シート(ヒーター/ベンチレーション機能付き)には、冬季のためのネック・ウォーマーも備わっています。

概して言えば、このPortofino Mは、フェラーリの2つの車両コンセプト(2+のクーペと
コンバーチブル)を1台に凝縮させたモデルであり、その完成度は過去に例を見ないレベルに達しています。