ジョン・ハント、情熱的なフェラーリのドライバー
文:ベン・オリバー
不動産業界のイノベーターは、マラネッロの車輌を 思いの限り走らせている
真のフェラリスティは車をガレージに仕舞い込んだしない。時間の許す限り走らせようとする。ジョン・ハントもそんなひとりだ。英国で不動産業を営む彼は、時間の許す限り、所有するフェラーリ最新モデルや歴史的名車に乗って長距離旅行を楽しんでいる。
2007年に約4億ユーロで売却した不動産仲介会社、フォックストンズを売却したハント氏の初めてのフェラーリは、よくあるミッド・エンジンのV8ではなく、フロントエンジンの456GTでした。「その時には子供が4人いたので、少なくともそのうちの2人を後ろに乗せる必要があったんです」と冗談まじりに語ります。
その後、275GTB/4を手に入れるために、456GTは手放しました。この275は、完全な車輌ではありませんでした。シャシーはスコットランドで購入し、エンジンはまた「どこか別の場所所」で購入したと言います。全てのパーツを揃え、走ることが出来る車にするのに3年かかりました。「それからは、ちょっと変わった車を購入するようになったんです。その大半はフェラーリでした」
ハント氏は、後に彼が「レンブラント・カー」と呼ぶ、410、250GT 「14ルーバー」 Tour de France、250 GT SWB Competizione、250 GTOなど、素晴らしい希少性の高いフェラーリ・コレクションの発端となった、GTOについての思い出を語ってくれました。そのGTOは、レストアされていなかったそうです。「多分7種類のレッドの塗料で塗装されていました。コーデュロイのカーペットは今でもそのままです。メカニカルコンポーネントに問題はありませんでしたが、コンクール・コンディションにはほど遠い状態でした。それでもとても素晴らしい車でした」彼は特にドライバビリティが優れていると言います。「GTOは非常に運転しやすいんです。レースで優れた戦績を残したのも頷けますね。特にハンドリングは信じられないくらい優れています」
「レンブラント・カー」は家族全員で楽しむロードカーとして使うことができないと判断したハント氏は、8年ほど前にコレクションを売却することに決めました。これでハント家のフェラーリ・ストリーが終わったわけではありません。すぐにハント氏と息子達(一人は優れたラリードライバー)が「走らせること」をテーマに新しいコレクションを作り上げて行きました。「私たちは一般道を走らせたいので、レースカーではなく、純粋なロードカーだけをコレクションしたいと思っているんです。もちろんそれはフェラーリに限ってはいませんが、大半は何故かフェラーリですね」
ハント氏は、切手収集に夢中になった子供の頃のように、現在コレクションが何台あるのか、正確な数は分からないと言います。恐らく現在30台前後あり、40台ほどでコレクションは終わるとのことですが、まだいくつか重要な車輌が欠けているそうです。「私はまだF50 GTを手に入れていないんです。この車は、私のコレクションに外すことが出来ない1台なので、もし売りに出されれば、かなりの金額を払う覚悟がある」とハント氏。
ハント氏は、「走らせること」が、フェラーリを所有する唯一の理由だと考えています。その言葉どおり、彼はこれまでにF40で100,000km、Enzoでは60,000km走りました。ハント氏のロードトリップは、フェラーリ・エンスージアストの間でもはや伝説となっています。Enzo の納車の際には給油以外、止まることなくノンストップで2,500km走りました「ラジオはありませんが、エンジン・サウンド以外に何が必要なんですか?」もう一つの例として、LaFerrariとLaFerrari Apertaの納車の時は、息子とその友人たちを引き連れ、コンボイを組んでマラネッロのファクトリーを訪れました。
深夜23時に到着した際、彼らを待っていたディレクターのひとりが遅い夕食に招待した。「ほかの自動車メーカーではこうはいきません」とハント氏は言います。「フェラーリは、社員全員が情熱的です。そこが素晴らしい。それで、つい私も熱くなるんです」