日本のターボ過給技術
文: Shimashita Yasuhisa
ターボのために日本の熟練技術者と連携するフェラーリ
1980年代にターボのパイオニアだったフェラーリは、1987年の伝説のFerrari F40で頂点に達しました。それから30年後の現在、エンジンのパワーと効率の両方を向上させるためにターボ過給に回帰し、ターボを供給するために、日本のターボ過給技術の熟練技術者と連携しています。
IHIは1853年に遡る輝かしい歴史を備えます。今日、IHIは、航空宇宙、防衛、エネルギー、重機などに携わり、自動車部門も盛況です。製品工学部門を統括するサトウ・ヨウイチ氏は、フェラーリ・プログラムを率いる幸運な人物となりました。
「費用にかかわらずとはいわないまでも、可能な限り最高の性能を備えたターボチャージャーが欲しいという相談を受けました」と彼は説明します。「当然のことですが、先方からの要求に私達も触発されました。」
ターボは、排気ガスによってタービンを回転させることで作動し、さらに大きな容積の圧縮空気をシリンダーに供給します。大量の空気はより大きなパワーを意味します。大きなパワーが必要な場合は、大型のターボを使用します。排気ガスの少ない低回転域での応答性が良くないこと、いわゆる「ターボラグ」が短所になります。
フェラーリはIHIに、ターボラグを避けて、パワフルでありながら応答性の高いターボエンジンを供給することを望んでいると告げました。IHIは、ロードカーに利用可能な技術的に最も先進のターボチャージャーを開発してこれに応じました。
例えば、タービンのインペラにインコネルニッケルクロム合金を使用する代わりに、TiALと呼ばれるチタンアルミナイド材料が使用されています。材料費は高くなっても慣性は30%以上削減される、とサトウ氏は説明します。インペラ自体も鋳造ではなく完全に機械加工されており、タービンは、通常のフローティングメタルベアリングの代わりにボールベアリングに取り付けられています。
通常のスポーツカーは、このようなテクノロジーの1つまたは2つしか備えません。フェラーリがその全てを統合していることは、ターボチャージャーの完成度に対する力の注ぎ方の大きさを示しています。ユニットの開発のためにIHIを選択したのも、この会社がその任務にふさわしいことを知っていたからです。
海外顧客販売グループ・マネージャーのユゲ・ミチヤ氏は、結果は誰が見ても明らかだと述べています。「488 GTBの3.9リッターV8ツインターボは素晴らしいエンジンです。圧倒的なパワーを備えており、あらゆる回転域で応答性を失うことはなく、優美なソプラノのような美しいフェラーリ・サウンドを奏でることも忘れてはなりません。」
そしてさらに大きな未来があると彼は付け加えます。「フェラーリとの仕事は始まったばかりです。ターボチャージャーは大きな可能性を秘めています。」フェラーリとIHIの関係は、ターボ加速する準備が完璧に整っています。