完璧さの追求
ダニエレ・ブレシャーニ
我々はラスベガスのヘルズ・キッチンでゴードン・ラムゼイにインタビューしました。彼は、料理、スポーツ、そしてフェラーリに対する情熱について語ってくれました。
真夜中、マッカラン国際空港で私をピックアップすると、タクシーの運転手はラスベガスのダウンタウンに向けて車を走らせました。自分の役割を心得ていることを示すかのように、運転手は街中のカジノの名前を次々と並び立てると、やがて私の最終目的地に車を到着させました。シーザーズ・パレスです。運転手は私がこの街に来た理由を尋ねます。
私は、「フェラーリに代わってゴードン・ラムゼイにインタビューをするためです」と話しました。そのとき、ルームミラー越しに運転手の目が光るのを見ました。彼は振り返って私にハイタッチします。「ようこそ!フェラーリのお客様!ゴードン・ラムゼイです!びっくりしました!」 彼はうれしそうです。私も少しうれしくなりました。そして彼は再び道路に目を向けます。翌朝、撮影現場に着いたとき、フェラーリとラムゼイのカップリング効果を私は再び目撃します。
私たちは「ヘルズ・キッチン」の外で会うことになっていました。「ヘルズ・キッチン」は、ミシュランの星を複数獲得しているこのシェフが、シーザーズ・パレスと提携して1年前にオープンさせたレストランです。お店の傍には魅力的なフレームレッドでカラーリングされたFerrari Portofinoが停車しています。ゴードンが到着し、このV8コンバーチブルの前でポーズを決めてから車に飛び乗ると、通りかかった人々は携帯電話を急いで取り出し、ソーシャル・メディアに写真を投稿し始めます。
卓越した車と卓越した料理、この2つの代表格に接することができるというのは、めったに経験できることではありません。撮影が終わると、私はラムゼイに対し、エクセレンスが彼にとってどのような意味を持つのかを尋ねました。「エクセレンスは情熱に由来するものです。間違いを犯すというのは学習プロセスの一部であるため、私は間違いを恐れてはいません。平均的な結果を出すことや仕事に満足することは簡単ですが、私は絶対にそうしたことを目標にしません。私のキャリアは失敗から始まりました。子供の頃はサッカー選手になりたかったのですが、実現しませんでした。それで料理をするようになったのです。今でも毎日、失敗から学ぶようにしています。今晩失敗したことや、私たちがひそかに蓄積してきた失敗の経験から学ぶのです。ですから、明日の昼食時に同じような失敗が起きることはありません」。
「子供のころ、『私立探偵マグナム』 を見ながら308を運転するのを夢見ていました。幸運にも現在、その車を所有しています。今では新しいLaFerrari Apertaでサーキットを走らせてもらえるようにもなって、スリルと完璧性だけでなく、世界の頂点を実感させるコントロール性能も体験しています。ステアリング・ホイールを握ってスイッチを押すと、他と一線を画すサウンドが響き渡ります。
5分間に渡ってアドレナリン放出させ、時速180マイルの走りを堪能したら、緊張をほどいて車から降ります。向こう2ヶ月間のために自分自身を充電するにはこれで十分です」。このほかにも、ラムゼイには、フェラーリによってもたらされた、忘れることのできない興奮みなぎる瞬間がありました。昨年9月にMonza SP2を初めて見たときのことです。
「文字通り息を飲みました。車に乗り込むと、70年に渡って築き上げられてきた純粋な完璧性をそのステアリング・ホイールの中に感じました。伝統からインスピレーションを得るだけというのはありえませんし、単に伝統をまねるというのはもっと良くないことです。伝統を解釈し直して、時代に即したものにする必要があります。これは、フェラーリが新しいモデルを出すときに行っているのと同じようなことです」と、ラムゼイは話しています。