サーキット走行に特化したマシンたち
クリス・リース
情熱的な愛好家が所有する4台のアイコニックなサーキット用フェラーリ
心を高ぶらせるフェラーリのスナップ写真として、これほど特別なものはありません。フェラーリのレーシング・マシンを象徴する4台がサーキットに集まりました。どれも、フェラーリ・チャレンジのレーサーであるブライアン・カミンスキーがひとりで所有している車両です。彼の信じられないようなピットレーン・ラインナップは、599XX、488 GT3、488 Challenge、そして中でも最も特別な1台である、ミハエル・シューマッハのF1マシンで構成されています。まずは2台の488から紹介します。488 Challengeは、ロードカーの488 GTBをベースにしたもので、フェラーリのチャレンジ・シリーズを走るために改造されたモデルです。これに対してGT3は、世界選手権でさまざまなブランドのマシンと戦いを繰り広げます。
エアロダイナミクスが性能の鍵となっているため、それぞれの車両に備わっている大型リヤウイングは必要不可欠なものです。また、速度を高めるうえでは出力も重要であることから、488 ChallengeのV8ツインターボエンジンは、670 cvの最高出力を発生します。フェラーリの画期的なシステムであるサイド・スリップ・コントロールも、レース用に(E-Diffとともに)再調整されています。そして、トラクションコントロール、E-Diff、ブレーキ・システムを微調整するため、ドライバーはマネッティーノのスイッチを1つではなく3つ操作します。
ブライアンは、チャレンジ・レースに対して次のように考えています。「極めて競争の激しいシリーズです。とても楽しいですが、レースは非常に高速です。フェラーリのレースに参加する良い方法であって、本当の家族のように感じています。」488 GT3のスペックは、GT3のレギュレーションに合わせて調整されています。馴染みのある3.9リッターのV8ツインターボエンジンは、その出力がクラス規定によって制限されます。エアロダイナミクスに関する一連の工夫もGT3専用のものであり、シーケンシャル・ギアボックスは、スライド・スリップ・コントロールのソフトウェアを使用せずに出力を供給します。極めて軽量な仕上がりとなっているため、車両は優れた競争力を誇る高速マシンであると言えます。ブライアンは、ドライビング・フィールについて次のように総括します。「これは夢のような車であって、バランスが優れているうえに、信じられないほどのダウンフォースを発生させます。」
次は599XXです。フェラーリが擁するすべてのXXモデルと同様、この車もロードカー(この場合は599 GTB Fiorano)をベースにしていますが、F1由来のテクノロジーを使用することで高度なサーキット・マシンに生まれ変わっています。大幅に変更されたV12エンジンは、とてつもなく大きな出力(700 cv)を生み出すばかりか、そのサウンドも驚きの水準です。ギアボックスはわずか60ミリ秒でシフト・チェンジを完了させ、「ハイパフォーマンス・ダイナミクス・コンセプト」の電子制御システムは、最高の性能を発揮するように設計されています。
フェラーリの「アクティフロー」エアロダイナミクス・パッケージにはトランクに搭載された2つのファンが含まれており、アンダーボディのエアフローをリヤのグリルへと導きます。さらに、ボディとブレーキ・システムも、軽量なカーボンファイバーを広範囲に使用したことで独自のメリットを享受しています。ブライアンは599XXについて次のように述べています。「とても楽しい車で、サーキットを滑るように走ることができます。特にフロント・ホイールの位置から排気ガスを排出するEvoキットによって、シフトダウンの際には、他のGTカーと一線を画す最高のサウンドを奏でます。夜寝るときも、まだその音が耳に残っているほどです。」
最後にラインナップのメイン、すなわちミハエル・シューマッハが2003年に優勝を飾った際のF1マシンを紹介します。フェラーリは、F1クリエンティといった、F1マシンに関する類まれなプログラムを用意しており、シューマッハ、アロンソ、ライコネンなどがかつてステアリングを握ったF1カーについて、現在の所有者がそれらを世界中のサーキットで走らせられるようにしています。ブライアンは次のように総括します。「Gフォース、ダウンフォース、グリップ – このF1カーに関してはすべてが秀逸です。今回は、4台すべての車と一緒に過ごすという、本当に特別な時間を持つことができました。実際、こうした時間を持ったのは、これが初めてのことです。」