488 Pista:「きわめて人間に近い」車

05 4月 2018

文:クリス・リース

フェラーリの最新スペシャル・シリーズがロードでどれほど本物のレーシングフィールを提供するか、についてのエピソード


想像してみて下さい。サーキットまで自分のロードカーを走らせ、ゴーグルを装着し、レースに勝利し、そのまま家路につくことができるということを。フェラーリが創業して間もない頃はそれが現実に行われていたのです。当時のレーシングカーは、ロードとサーキットの双方を走ることができました。実際、フェラーリという企業は、このアイデアに基づいて誕生したのです。そして、新型Ferrari 488 Pistaは、色々な意味でそのルーツに立ち返り、「公道を走るレーシングマシン」という先駆的なスピリットを復活させています。488 Pistaは、360 Challengeを発端とし、430 Scuderia、そして458 Specialeへと進化を遂げてきた、フェラーリ「スペシャル・シリーズ」の最新作であり、最も進んだ技術を搭載しています。シリーズのモデルは、どれもサーキット走行の本質をロード走行でも堪能させてくれます。ドライバーの要求に対して車が即座に応答してくれるのです。

製品マーケティングの責任者であり、執行役員でもあるニコラ・ボアリが新型488 Pistaの誕生について話をしてくれました。「FIA世界耐久選手権で勝利した488 GTEや、ワンメイクレース・シリーズの488 Challenge、かつて当社にはここまで成功を収めたプラットフォームは存在していませんでした。

 

世界各地にある25のサーキットでテストを行った結果、488は、非常に実力のある高性能なパッケージであることが証明されました。」

「Pistaは、これまでのスペシャル・シリーズの中で最も大きな飛躍を果たしています。458 Specialeは純粋に走り楽しむための車でしたが、488 Pistaはより多くの要求に応えられるように仕上がっています。私達は車両のレーシングスピリットを際立たせるために、かつてないほどの努力をしたのです。488 Pistaほど、フェラーリのサーキット専用マシンに乗っているかのような感覚をもたらしてくれる車は存在しないでしょう。」

 

シャシーやボディに軽量なカーボンファイバーを採用するなどして、90kgの軽量化という偉業を成し遂げることもできました。エンジンにも軽量部品が多用されています。オプションのカーボンホイールは、488 GTBの標準リムに比べて40%軽量化されているため、俊敏性が高まるとともにレーシングフィールも進化します。レーシングカーらしさはキャビンにまでおよんでいて、必要不可欠なもの以外は全て削ぎ落とされています。その結果はパフォーマンスの数値に如実に表れています。0-200km/h加速のタイムはたったの7.6秒。458 Specialeのタイムが9.1秒であることを考えると、かつてない進化だと言えます。

さらに、「Race」モードのギアシフトプログラムを新しくしたことでシフトタイムが短縮。また、レーシングモデルの488 Challengeに由来する部品を採用したため、ブレーキ性能も向上しています。何よりも重要なのは、フェラーリ・ダイナミック・エンハンサー(FDE)というまったく新しいシステムが追加されたことかもしれません。このシステムにより、ドライバーは過酷な条件下でのコーナリングにおいて、直感的かつクイックな運転操作が可能になります。ボアリは、「きわめて人間に近い」反応を示す車が完成したと話しています。フェラーリが488 GTEで積み重ねたレースでの経験は、488 Pistaの空力性能を大きく向上させることに役立てられています。象徴的で革新的なフロントの「Sダクト」が空力改善の立役者となり、ダウンフォースを増大させます。このエレメントは、フロントバンパーの下へと流れる印象的なストライプ柄で強調されています。

 

「スペシャル・シリーズのオーナー様はご自分の車でサーキットを走られる場合もあるため、パフォーマンスの高さを重視されます」とボアリは言います。さらに彼は、「488 Pistaはレーシングカーに由来するモデルなので、私たちはこういったお客様の比率が伸びると見込んでいます。そうしたお客様にはこの車が提供するあらゆる機会を満喫して頂きたいと考えていますが、それを実現するうえでサーキット走行に勝るものはありません。488 Pistaは、他に類を見ない本格的な車です。まるで本物のレーシングカーに乗っているかのような体験をすることができます。魅力的でエモーショナルな走りは決して色褪せることがありません」と続けています。