イタリアに対するオマージュ
Kevin M. Buckley
英国の詩人ハナー・ローは、イタリアが感染症による緊急事態に見舞われる中、その「美しい国」のために自らの思いを綴ると、優れた詩に対して贈られる、英国の代表的な賞の一つを受賞しました。
ハナー・ローは、オフィシャル・フェラーリ・マガジンに掲載する詩についてオファーがあった際、最初、少しばかり驚いたことを認めています。「正直なところ、私は本当に車のことをそれほど知らないんです。ですから、自分の作品が自動車雑誌に掲載されるということは、思ってもみなかったことです。しかも相手がフェラーリですから」と、43歳のイギリスの詩人は話します。
この件で電話が掛かってきたときは、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に関する厳格なロックダウンのさなかであったため、彼女はロンドン北部の自宅にいました。28歳から詩を書き続けてきたハナーは、当初、ある程度の不安に襲われていたこと認めています。「私はその依頼を承諾しましたが、正直、『自分はイタリアについて何を知っているんだろうか?』と考えました」と、 彼女は振り返ります。「しかし、自分の人生経験についてもう少しじっくりと考えた結果、その申し出を受け入れることにしました。イタリアは自分にとってそんなに遠い存在ではないことに気づいたんです」。
休日にシチリア島とサルデーニャ島を訪れたことがあったため、彼女はある程度イタリアのことを知っていましたが、2012年になると、この「美しい国」は彼女の詩意識の中に入り込むようになり、彼女を作家の道へ向かわせるようになります。彼女がTOFMのために用意してくれた作品「In Italy, in Love」は、20世紀を代表するイタリア人作家の一人、サルヴァトーレ・クァジモドがかつて生み出した三行詩の傑作にそのルーツがあります。
「私はクァジモドをとても崇拝しています。さらに、三行連の作品で知られるダンテ・アリギエーリに対してオマージュを捧げるために、私は同じスタイルで詩を書くことも選択したのです」と、ハナーは話します。オフィシャル・フェラーリ・マガジンにおける華々しいデビューからまもなく、彼女はその年の優れた詩に対して贈られる英国の権威ある賞「チャムリー賞」を受賞しました。彼女は一流作家の仲間入りを果たしたのです。「チャムリー賞」は、イギリスの作家協会が一つの作品ではなく一連の作品を評価したうえで詩人たちに送るものであり、かつてこの賞によって、シェイマス・ヒーニー、デレック・ウォルコット、ヴァーノン・スキャネル、キングズリー・エイミス、イアン・クライトン・スミス、ロジャー・マクグーといった著名な文芸作家らがその栄誉に輝いています。2019年まで桂冠詩人だったキャロル・アン・ダフィもかつての受賞者です。
彼女は、大学の友人であるファビアーノや長く同居しているダニエラのこと、ロンドンのリトル・イタリーに出掛け、ソーホーのオールド・コンプトン・ストリートから外れたところにある「バー・イタリア」でコーヒーをすすったことなどを回顧したことから、「今回の件は、私がこの国で得た数多くの有意義な体験や、ここに住むイタリア人について振り返る機会を与えてくれました。イタリアについて考えるとき、ファッションや幻惑的な魅力というものが思考の対象になりますが、私は、本質的なスタイルというものを真っ先にイタリアと結び付けます」と話しています。さらに彼女は、「もちろん、フェラーリはそうした中で大きな存在感を示します」と続けました。
イタリアについて説明をする際、彼女は「少しばかり」ユーモアを交えて説明をしようとしていました。「しかし、私はお決まりの表現を使用しないように努めたうえで、その場所について知っていることを数多く盛り込むようにしました」と、彼女は主張します。例えば、レストランのテーブル囲むように人々が集まったという場面は、私がトリノにいたときの思い出です。説明はそんな感じにしました」と主張します。実際、「In Italy, In Love」は、「joie de vivre(生きていることの喜び)」、さまざまな感情、そして情熱など、イタリアの文化を支える要素を見事に表現しています。これらはどれもフェラーリにとっての重要な要素でもあります。
In Italy, In Love
by Hannah Lowe
In Italy, I decide to fall in love. It’s April,
a man writes me love letters, soft entreaties
that drift into my inbox like rose petals
and from my fifth-floor room of the Pensione Orizzonte
I watch the river flow steady and passionate
as my waiting heart. Each day I cross the city
to the airy white classroom where we sit
and learn to tell stories – which details matter,
how to deepen character, what to keep, to cut?
At lunch, I drink espresso with my teacher
in the smoky blue-tiled bar next door
where an old man tells a long garrulous saga
I think he’s told a hundred times before.
Back in my room, my love sends poems by Eugenio
Montale: portami il girasole. He wants me, he is so sure.
I re-watch clips from Cinema Paradiso,
fire, film, desire, love’s comfort, love’s pain –
I want a man, any man, below my window,
waiting in all weathers, in torrential rain
that makes his shirt transparent so I can see
the shining ruby of his heart below his skin.
At night, my class eat dinner at the Café Giovanni –
we’re strangers, but at the long table, the flow
of Sangiovese has us laughing and weepy
while the waiter shaves parmigiano as though
conducting an orchestra. I eat ribollita,
arancini, a spring green risotto –
so rousing, squisito, the taste, the texture,
I hide the bliss on my face behind a tissue.
Later, naked on the bedcovers, I wonder
what I am in love with, the man with his honeydew
of words, or this city, this country?
I watch the scene from A Room with a View
where the English girl is finally kissed
on a thundery hillside in Tuscany.
Where else could a kiss like that exist?
It needs wild flowers, Tuscan light, Puccini.
Oh I want to be kissed like that, to be kissed and kissed –