フェラーリのワンオフプロジェクトが10周年を迎える

17 12月 2018

Richard Aucock

最初のフェラーリワンオフプロジェクトは、2008年に誕生しました。今回は、フェラーリワンオフの傑作を何台かご紹介します。


フェラーリが創業した当時、ボディについてはカスタムメイドが当然でした。クライアントは、シャシーおよびエンジンについて工場と連絡を取り合ったのち、ボディ製作を依頼するイタリアのスタイリング事務所を選択していたのです。著名なカロッツェリアは、どこもフェラーリの卓越したローリングシャーシのためにボディをデザインしたいと考えていました。こうした熱意の下で生み出された初期のフェラーリワンオフ・モデルは、その多くが現在もコレクター達を魅了して止みません。


往年のカスタムカーのスピリットを復活させようという思いから、フェラーリは2008年に最初の「ポートフォリオ・コーチビルディング・プログラム」を立ち上げました。当初の狙いは、お客様がイタリアの一流デザイン事務所および工場のスペシャリスト達と協力して、フェラーリのスポーツカーをワンオフ・モデルとしてデザインし直せるようにすることでした。しかし、その後間もなくすると方向性が変わり、まったく新しいデザインを生み出していくこととなったのです。そして、2010年にフェラーリが自社デザインセンターを設立したことから、ほとんどのプロジェクトは自社内でフラヴィオ・マンゾーニのチームが対応することとなりました。


この新たなプログラムで製作された最初のフェラーリワンオフは、2008年のSP1です。その後10年間で、多数のワンオフ車両が製作されました。この記念すべきタイミングにふさわしい、フェラーリの見事な作品をいくつかご紹介しましょう。



フェラーリが最初に手掛けた特別なワンオフ・モデルは、2008年に個人のクライアントの発注を受けて製作されたもので、2台目は米国のエドワルド・ワルソン氏のために製作されました。このP540 Superfast Apertaは、599 GTB Fioranoをベースとした1台です。1968年にフェデリコ・フェリーニ監督がショートフィルム『悪魔の首飾り』を製作した際、ワンオフカロッツェリアの「ファントゥッツィ」がその映画用にフェラーリをデザインしていますが、P540 Superfast Apertaは、その映画に使用したモデルからインスピレーションを受けたとされています。この車両のデザインには14ヶ月を要していて、2009年末に納車された際、ワルソン氏はフェラーリに、 「これは、私の人生で最も特別なクリスマスプレゼントだ」と述べました。


また、ニューヨーク在住のコレクターであるピーター・カリコウ氏は、長年のフェラーリ・ファンであり、 フェラーリを初めて手に入れてから45年が経過したことを祝うため、フェラーリにサポートを依頼しました。これが、2011年にFerrari Superamerica 45を誕生させるきっかけとなったのです。


フェラーリデザインが設計のすべてを社内で行ったこのモデルは、カリコウ氏所有の1961年製400 Superamericaと同様、専用のブル・アンティッレ塗装がボディに施されました。この車両は、2011年のコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステで一般公開されています。



ワンオフ・モデルを注文したフェラーリのクライアントには、有名人が存在します。Ferrari SP12 ECの「EC」は、エリック・クラプトンの頭文字です。2012年、彼はフェラーリとピニンファリーナに対し、クラシックな512 BBにインスパイアされた現代のスポーツカーを製作して欲しいと依頼しました。クラプトン氏は、長年をかけて3台以上の512 BBを収集しています。458 ItaliaをベースとしたSP12 ECは、モダンクラシックを体現した印象的な1台です。


別の例としては、過去のクラシックモデルにオマージュを捧げて2014年に生み出されたワンオフ・モデル、Ferrari F12 TRSがあります。有名な1957年のTesta Rossaレーサーがフェラーリデザインセンターのチームにインスピレーションを与えた結果、究極の2シーターオープントップとして、Ferrari F12berlinettaのバルケッタバージョンが製作されたのです。当然のことながら、フロントのボンネットに設けられた透明のウインドウからは、V12エンジンの「赤い頭」を確認することができます。このモデルは、2014年のフェラーリカヴァルケードに出展されたほか、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでもその走りを披露しています。


究極のレースに触発されたフェラーリのスペシャルプロジェクトの成果としては、2016年のSP 275 RW Competizioneを紹介することができます。これは、ピニンファリーナとフェラーリデザインセンターの技術力に支えられたモデルであり、F12berlinettaのシャシー、F12tdfのエンジン、そしてカスタムデザインのボディを融合させています。1965年のル・マン24時間レースGTクラスで優勝した275 GTB Competizioneにインスピレーションを受けたこのワンオフは、フロントフェンダーにサイドベント、リヤクオーターパネルにトリプルルーバー、リヤバンパーにルーバーを備えるほか、ミル加工されたアルミニウム製のフューエルフィラーキャップを装備しています。鮮やかなイエローの塗装も、1965年のEcurie Francorchampsレーサーのカラーを正確に再現するため、3層塗装となっています。



次に紹介するワンオフ・モデルは、イギリス人クライアントの依頼を受けて製作し、2016年に公開したモデルです。この車両は、458 Specialeをさらにスポーティーに、そしてより究極なものにすべく製作されました。完全にカスタムメイドされたボディにおいてひと際目を引くのは、優れたバイザー効果を発揮するフロントウインドウです。1984年登場の有名なFerrari GTOに倣い、Aピラーにはブラック塗装、そしてフロントウインドウ上部にはトリム加工が施してあります。


では、スペシャルプロジェクトが生み出した最新のフェラーリワンオフ・モデルをご存知でしょうか?それは、2018年の前半に発表されたFerrari SP38で、フェラーリデザインセンターがフェラーリの熱烈なファンであるお客様のために製作した1台です。このクライアントは、かの有名なFerrari F40を暗示するデザインにして欲しいと希望しました。そこでデザイナー達は、488 GTBに対して著しく新しい解釈を加え、その希望を実現させたのです。
 

鮮やかな3層塗装のメタリックレッドで仕上げられたこのモデルは、フィオラノで発表され、納車直後にはフェラーリの自社テストサーキットで高速走行を行いました。これは、幸運なクライアントのための特別な計らいでした。