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車輌

同じ血脈を持つ

ロードカー用としてはフェラーリ史上最もパワフルなエンジンと革新的な空力・駆動関連技術を持つDNAがつなぐ、新しい2つのV12エンジン搭載車
文 – ベン・プルマン
812 Competizione、そしてひときわ目を引くタルガトップ・バージョンの812 Competizione Aは、妥協のない最高のパフォーマンスを実現します。
数多くの特筆すべき点のひとつに、フェラーリのすべてのロードカーの中でも最高の出力と回転数を誇るV12エンジンが挙げられます。6.5リッターV12エンジンが生み出す830 cv、9,500 rpmという数値だけでも注目に値しますが、それに加えて強烈なパワー、驚くべきレスポンス、ほかにはない独特のサウンドも魅力です。

このようなすばらしい成果を引き出すために、自然吸気エンジン830 cvの設計が大幅に見直され、チタン製コンロッド、軽量化されたクランクシャフト、リチウムイオン・バッテリー、F1での経験を反映した新しいカム・システムなどが導入されました。

812 Competizioneのシングルエアダクトは、その両サイドにカーボンファイバー仕上げのインテークが設けけられていて、ブレーキを冷却できるようになっています。エンジン・クーラントの冷却性能が10%向上している一方、ブレーキの動作温度も約30°C低下しました。

新しくなったエキゾースト・システムはそれにふさわしい優れたエンジン性能で、インテーク・システムと相まって一味違うスリリングなサウンドを響かせます。7速デュアルクラッチ・ギアボックスがシフト時間を5%短縮し、V12で実現可能な最大値を500 rpm上昇させたことによって新しいモデルの進化はより鮮明なものとなっています。

パワーが増強した一方で、重量は合計で38 kgも削減されています。インテリアはもちろんのこと、エクステリアにもフロントバンパー、リヤバンパー、エアインテークを中心に広くカーボンファイバーを取り入れました。

細かい変更点としては、軽量な産業用繊維の採用や遮音材の削減などがあります。重量削減には、軽量鍛造アルミニウム製ホイール、チタン製スタッドボルト、さらにはエンジン・オイルタンクの1 kg軽量化が貢献しています。
エアロダイナミクスの観点からは、ダウンフォースの大幅な増大も印象的です。同時に、ラジエーターのサイズや重量をまったく増やすことなく冷却性能を10%向上させることに成功しました。

両モデルとも、フロント部は、ボンネット中央のカーボンファイバー製「ブレード」の両側に設けたベントによってホットエアの排出が強化されています。

ブレーキの冷却関連では、SF90 Stradaleから導入され、エアインテークがキャスティングに一体化されていた、新しいフロントの「エアロ」キャリパーの設計を完全に見直しました。

812 Competizioneのリヤは、エアロダイナミクス性能に磨きが掛けられていることを示しています。ボルテックス・ジェネレータ―や、車幅いっぱいに広がるスポイラーとディフューザーが装備されたうえに、エグゾーストの位置が変更されました。どれもF1の知見を取り入れたもので、ダウンフォースを増大させることが目的です。

リヤディフューザーは車幅いっぱいに広がり、スポイラーも高さが高くなっただけでなく、ほぼ車幅いっぱいに伸びています。このディフューザーとスポイラーは、連動してリヤアクスルのダウンフォースを可能な限り最大限に増大させます。

エキゾーストの配置を変更することで、2010年代以降のF1マシンでは一般的となっていたソリューション、 すなわち排気ガスとディフューザーの相互作用を利用した手法を取り入れることが可能になりました。これは、エキゾースト・パイプから排出される熱せられた排気ガスを利用してディフューザーから排出される「冷たい」ガスにエネルギーを与えることでダウンフォースを増大させる仕組みです。

812 Competizioneはリヤのガラスに代わるリヤスクリーンが独特で、3対のボルテックス・ジェネレーターを備えており、 エアフローの一部はダウンフォースを増大させるスポイラーのサイドへ導かれます。
812 Competizioneには、強化されたエンジンとエアロダイナミクス性能を最大限に活用するために初めて採用された革新的なコンポーネントが多数あります。これには、初めて採用された四輪独立ステアリング、バージョン7.0に進化したサイドスリップ・コントロール(SSC)システム、カスタマイズされた新しいMichelin Cup2Rタイヤが含まれます。

四輪独立ステアリングには、左右のアクチュエーターを同時ではなく個別に制御できる新しい電子式制御システムが組み込まれています。この進化が並外れた俊敏性と正確なコーナリングをもたらしました。

ボンネットを横断する溝にはカーボンファイバー製のブレードが備わっていています。エンジンルーム用のエアベントを隠す革新的な手段であるだけでなく、エアベントの表面積を増大させることにも貢献しています。

812 Superfastをベースにした新しい2つのモデルは、コレクターや熱心な愛好家といった極めて独創的なグループをターゲットとしています。このような方々であれば、そのエンジンに用いられている数々の革新的な技術、車両ダイナミクス、エアロダイナミクスを十分に堪能していただけることでしょう。

V12スペシャル・シリーズの先代モデルにあたるF12tdfおよび599 GTOの伝統を受け継ぎつつ、新たな高みに引き上げられた性能を備える2台です。