明らかな後継モデル

16 12月 2019

Kevin M. Buckley

マラネッロは半世紀ぶりにV12のオープントップ・モデルを誕生させました。「812 GTS」誕生。過去に根ざした未来志向の1台です。


クラシックな雰囲気を漂わせるエレガントな各部のライン、そのすべてがV12エンジンの放つ圧倒的なパワーと融合したオープントップの365 GTS4は、1969年にデビューすると多大な人気を博しました。そして特に米国を中心に、その人気はすぐさま「カルト・カー」のステータスを獲得するまでになったのです。今回、12気筒エンジンをフロントにレイアウトしたオープントップ・モデル「812 GTS」を誕生させたことにより、フェラーリはV12に関するかつての夢を蘇らせました。

このモデルは、フェラーリが1960年代の後半に築いた、同社を大きく象徴する歴史を想起させますが、そこに採用されている精緻なテクノロジーは、フェラーリのラインナップにきわめて現代的なモデルが加わったことを示すものです。

812 GTSは、0-100km/h加速のタイムが3秒未満で、最高速度は340km/hに達します。ルーフを開けると、乗員はエンジンおよびエキゾーストのサウンドをよりダイレクトに堪能することができます。これは、聴覚を通じた体験をより充実したものにできるよう、エキゾースト・システムを相互接続するという独自の手法を採用しているためで、燃焼系にも微調整が施してあります。最高出力は812 Superfastの場合とまったく同じで、 800cvを誇ります。

最近、この812 GTSはマラネッロを飛び出し、北イタリアに位置するエミリア・ロマーニャ州を郊外の奥深くまで走りました。最終的に辿り着いたのは、カステッラルクアートです。ピアチェンツァとモデナの中間に位置するこの魅惑的な場所は、「il bel paese(美しい国)」のいたるところで目にする、昔とほとんど変わっていない、中世の村の一つです。流れが急なアルダ川の左岸には、5,000人に満たないほどの住人が暮らしていて、石畳の道や石の厚い壁は、この地域ならではの美味しい食事を目的にイタリア全土から訪れた人々を魅了します。

きわめて有名なこのロケーションは、フェラーリのニュー・モデルが独自のエレガントなラインを引き立たせるうえで、うってつけの場所でした。トノカバーの上にはバットレスが高くそびえており、ボタン操作一つでトノカバーの下にルーフが格納されます。クラシックかつ伝統的なデザインですが、きわめて現代的な手法が用いられています。

人を振り向かせるほど魅力的なこの812 GTSが、カステッラルクアートの歴史ある道を慎重に進んでいくその様子は、この車がマラネッロの歴史からインスピレーションを得たモデルであることを明確にアピールしているかのようでした。同時に、この車は、新たな時代の到来を告げる現代の技術を採用することにより、V12の輝かしい生い立ちを今に伝えようとしているのです。

古代からの石畳、そして各種の急峻な斜面は、812 GTSの新しいサスペンションやコントロール・システムを試すうえで、どれも絶好の場所です。このオープントップ・モデルが812 Superfastと変わらぬ走りを披露できることも示せます。