250 Testa Rossa:チャンピオンに輝いた「赤い頭」のフェラーリ

09 10月 2018

文: Richard Aucock

60年前に初優勝を飾った赤い頭のフェラーリ - その勢いは留まるところを知らず…


Testa Rossaは、フェラーリの歴史を彩る伝説的な名前です。何十年にもわたり、その名前は記憶に残るモデルに継承されてきました。とりわけ、1980年代に登場したアイコニックなFerrari Testarossaは、何百万ドルもする正真正銘のポスター・カーでした。その名前の起源は、スポーツカー・レースのレギュレーション変更が施行された1957年にまで遡ります。Ferrari 250 Testa Rossaは、ワールド・スポーツカー・チャンピオンシップのレギュレーション変更に備えて誕生したモデルです。

 

1958年から、マシンのエンジンは3.0リッターに制限されることになったのです。それを見越していた抜け目のないエンツォ・フェラーリは、3.0リッターV12を搭載するスポーツカーの開発を命じました。その後、完成したマシンは、デビュー戦となった1957年のニュルブルクリンク1000kmレースにおいて、トップ10の順位でフィニッシュしています。

250 Testa Rossaは、大成功を収めた1956年の500 TRを発展させたモデルです。ちなみに、500 TRのモデル名に含まれる数字の500は、フェラーリの慣例に則って1気筒あたりの排気量を示すもので、搭載するエンジンは、2.0リッターの4気筒でした。フェラーリの有名なエンジニア、アウレリオ・ランプレディが手掛けたこのエンジンは、フェラーリ初の4気筒であり、もともとはフォーミュラ2のマシン用に設計されたものでした。その後はスポーツカーのFerrari 500 Mondialにも搭載されています。

 

500 TRは、先代の500 Mondialをよりパワフルに進化させたモデルであることを示すため、シリンダーヘッド(テスタ)が赤(ロッサ)で塗装されました。こうして500 Mondialは500 TRへと生まれ変わったのです。この流儀は250 Testa Rossaにも引き継がれたため、同車のカムカバーも真っ赤に彩られました。そしてフェラーリの伝説にその車名を残すべく、有名ドライバー・チームが結成されました。このモデルが初めてフルシーズンを戦うことになった1958年、チームは早くも最初の成功を手に入れています。

 

フィル・ヒルとピーター・コリンズがブエノスアイレス1000kmレースで優勝すると、そのすぐあとに開催されたセブリング12時間レースでも他の250 Testa Rossaを引き離して勝利を挙げたのです。しかし、その活躍は、このモデルにとって成功の序章に過ぎませんでした。その年の後半、Testa Rossaはタルガ・フローリオのレースで優勝すると、ル・マン24時間レースで圧倒的な初勝利を果たしました。

多大な成功を収めた250 Testa Rossaは、1958年ワールド・スポーツカーのコンストラクターズ・タイトルをフェラーリにもたらし、その年を終えています。1959年は厳しい1年となりましたが、それでもセブリングで勝利することができました。1960年は、ル・マン24時間を含むその他のレースでも再び勝利を獲得。さらに1961年、マシンは、フェラーリがコンストラクターズ・タイトルを再度獲得するという偉業を成し遂げるうえで大きく貢献しています。発表から5年が経過した1962年になってもなお、Testa Rossaはセブリングやル・マンで多くの優勝を手にし続けていました。

 

250 Testa Rossaは、今やフェラーリの歴史を象徴する1台となっています。また、それはマラネッロ史上最も成功したレーシングカーのひとつであるとともに、エンツォ・フェラーリのビジョンがスクーデリアに対していかに多くの勝利をもたらしたのかを示す典型的な例でもあります。

 

250 Testa Rossaをドライブしたのは、ダン・ガーニー、マイク・ホーソーン、そしてヴォルフガング・フォン・トリップスなど、その時代の最も有名なドライバーたちでした。現在、オリジナル・モデルは、何百万ドルもの高値で売られています。

 

実際、ヒルとコリンズが1957年に初勝利を獲得した際に駆った1957年製のモデルは、2014年に約4000万ドルの値がついたと言われています。シャシー番号0704のそのモデルは、レースでの活躍を終えたあと、ヘンリーフォード博物館で驚くほどにオリジナルの状態が保たれ、30年の時を過ごしました。モデル名が「赤い頭」を意味するこの有名なフェラーリは、その評価額が世間の注目を集めました。これもまた、250 Testa Rossaを伝説のモデルにしている理由のひとつです。