ある日、世界が一変しました。すべては、ある病気のせいでした。私たち相互の交流、生活スタイル、経済が大きな影響を受けることになったのです。
この病気が「新型コロナウイルス」と名づけられ、悲劇的な結果を引き起こすことが判明して以来、新しい挑戦、新しい制約、新しい環境にできるだけ早く適応しようと、世界中が躍起になっています。このたえまなく変化する状況において、フェラーリ・ブランドは生まれ持った本質によって優れた回復力を発揮し、もともと緊密だったフェラーリの人々とフェラーリ伝説発祥の地との絆はいっそう深まりました。 それは、きわめて具体的なレベルでのことでした。フェラーリは、病院、学校、従業員とその家族、さらにはマラネッロの地元の商店主など、ウイルスと闘う最前線にいる人々を支援するプロジェクトを通じて、フェラーリなりに貢献したのです。また、ジェスティオーネ・スポルティーヴァの気前のよさ、献身、そして発明と技術の見事な融合により、フェラーリは効率に優れた低コストの呼吸用保護具を製造し、ウイルスの被害を受けている恵まれない国の人々の生活の改善をサポートしました。
こうした取り組みの柱となったのは、連帯でした。たとえば、ここ数年来、フェラーリ・カヴァルケードに参加した世界中の顧客が始めた募金活動では、医療サービス向けに100万ユーロ以上の寄付金が集まりました。この人類が直面した巨大な挑戦を通じて、大きな苦難の時期は、しばしば大きなチャンスの時期でもあることが再確認されました。フェラーリ史上初の試みとして、オンライン専用イベントにおいて、Ferrari Portofino M、Ferrari SF90 Spider、Ferrari 488 GT Modificataの3つの新しいモデルが発表されました。Ferrari Portofino Mは、Ferrari Portofinoの進化版で、最後の「M」はModificataを意味します。この2+2シーターの跳ね馬スパイダーは、新しい技術とデザインの特徴がふんだんに盛り込まれており、とりわけ8速デュアル・クラッチ・トランスミッションと5つのモードが選べるマネッティーノは、どちらも初めてMaranello GTコンバーチブルに採用されたものです。Ferrari SF90 Spiderは、リトラクタブル・ハードトップを備えたフェラーリ初の正真正銘のハイブリッド車です。これにより、 まったく新しい感覚のドライビング・エクスペリエンスが得られます。また、Ferrari 488 GT Modificataは、488 GTEとGT3 Evo 2020を完璧に融合させたもので、後者の大成功を収めた競技車両に課せられたレギュレーションの制約を受けることはありません。
バーチャルな世界でも、eスポーツの人気の急上昇によって革命が起き、活気づきました。フェラーリ・ドライバー・アカデミーは、跳ね馬ブランドの名を改めて世に知らしめ、ダヴィッデ・トニッツァがバーチャルF1世界チャンピオンになるなど、次々と成功を収めました。こうしたプロジェクトは、ほんの少しずつですが、私たちが日常生活に戻るのに役立ちました。やがてリアルなF1が復活し、9月13日、フェラーリはムジェロでF1グランプリ参戦1,000回目という比類ないマイルストーンを祝うことになりました。このレースでは、1950年のモナコでフェラーリがF1デビューを飾ったときのFerrari 125 Sおよび125 F1と同じ外観をまとったマシンが並びました。このような形で祝われた卓絶したスポーツの記録は、現在のみならず未来のフェラーリ・ファンにも、何世代にもわたって感動を与え続けることでしょう。フェラーリの比類ないストーリーを語る上で、ファンは欠かせない存在だからです。 しかし、新型コロナウイルスのせいで、フェラーリ・ファンがル・マン24時間レースを観戦することはできませんでした。2021年、LMGTEカテゴリーに参戦したフェラーリの台数は、最多となる16台に達しました。このフランスのサルト県にある全長13 kmを超えるアスファルトの上で、跳ね馬をドライブするピエール・グイディ/カラド/セラ組は全力を尽くし、惜しくも勝利を逃して2位を獲得しました。しかし、間違いなく歴史に残るであろうこの年に、ひとつだけ非常に明るい話題がありました。それは、フェラーリ・ドライバー・アカデミーのプログラムに、初めて女性ドライバーが参加したことです。モータースポーツへの女性の進出の促進と、12~16歳の有能な少女をサポートすることを目指して、フェラーリがFIAとともに立ち上げた「Girls on Track – Rising Stars」選考会において、スペイン出身のマヤ・ヴォーグが優勝したのです。